ポスティング(チラシ広告)の歴史
エフェソスのセルシウス図書館の跡地 画像:wikipedia
チラシの歴史
現存する世界で最も古い広告は、ロンドンの大英博物館に展示されている、紀元前1世紀ごろのものとされる、古代エジプトテーベ遺跡から発掘されたパピルス紙に書かれた手書きの広告です。
その内容は、「逃亡した奴隷を探し出してくれたら、褒賞を与えます」といったものだったそうです。
3000年も前に、読み書きが出来てこの内容を理解していた人が多くいたことも驚きですが、紙に書いて配るという行為がこんなに古い時代から始まっていたとは驚きではないでしょうか。
屋外広告の歴史
紙によるチラシだけでなく、屋外広告も遺跡から見つかっています。トルコに現存している、古代ローマ時代(紀元135年)に建てられたとされている「セルシウス図書館」。この建物から続く大理石の路面に、財布や足形、ハートや女性像などの記号が彫られていました。
これは、「財布を持ってこの道を足形に沿って行けば、きれいな女性がハートを込めたサービスをします」という風俗店の広告だということです。
当時は図書館と風俗店が地下道で直結していて、「図書館に行ってくる」と家の者に言い、男性が足しげく通ったのではないかと言われています。
日本での屋外広告は、平安時代にまで遡ります。天長10年に施行されていた法律には、「市(いち)には売り場や店舗ごとに看板を立て、何を売っているか明記しなければならない」と定められています。
現在では、これが日本の屋外広告の始まりという説が有力です。ちなみにこの法律には、「粗悪品の売買をかたく禁ずる」など清く正しい商業の成熟が感じられます。
ポスティングの始まり
ポスティングは、延宝元年(1673年)に伊勢松坂の豪商「三井高利」が江戸で開業した呉服店の価格などを引き札(チラシ)にして江戸の住戸に配ったことが始まりとされています。
住戸に直接配ったことで呉服店の知名度は上がり、またたく間に江戸の町で一、二を争うほどの繁盛店になったそうです。
来店した客に酒や割引券を進呈するといったサービスをチラシに記したことで、呉服店としての生き残りを賭けたのでしょう。当時としては周囲にポスティングを反対されるほど斬新な商法だったようです。
今では多くの人が当たり前のように見ているチラシですが、ポスティングの歴史が江戸時代に遡ることを知っている人は少ないかもしれません。
ちなみに、大阪では引き札を街頭でまき散らすように配ったことから、広告の書かれた引き札を「チラシ」と呼ぶようになり、それが段々と全国に広まっていったといわれています。
三井高利 画像:http://edo-g.com/images/view/26